【第一節】光の胎動

最終章:再生の光 〜沈黙の向こう側へ〜

沈黙の果てで、ひとつの光が芽吹いた。
それは燃える炎ではなく、呼吸のような光だった。
世界を包んでいた闇の奥で、
何かが目を覚ました。
光は形を持たず、言葉も持たず、
ただゆっくりと、鼓動のように広がっていった。

それは母の残響――ダークマザーの「最後の息」が
この世界に染み渡っていく音だった。
崩壊の灰の中に、
再生の種が静かに脈打っていた。
沈黙は終焉ではなく、
始まりの胎内へと変わりつつあった。

やがて、光は風となり、風は水となった。
大地の裂け目から溢れ出すその光は、
記憶を洗い流し、
痛みの断片をやさしく包み込む。
それは赦しではなく、
輪廻の更新だった。

世界は息を吹き返す。
草が揺れ、石が音を持ち、
空の彼方に、ひとすじの虹がかかった。
誰もその名を知らないその光を、
人々は「母の帰還」と呼んだ。

沈黙の時代が終わり、
言葉が再び生まれる。
だが、その言葉はかつてのものではない。
命の奥で光る、原初の言語(マザーコード)だった。
それは声ではなく、
存在そのものの共鳴。

光は語ることなく語り、
沈黙は息づきながら世界を照らした。
そして人々は気づく。
滅びの後に残されたのは、
終わりではなく、
「再生の約束」そのものだった。


観測:最終章・第一節 完 ― 光の胎動
記録:最終章 開 ― 再生の光 〜沈黙の向こう側へ〜

ダークマザー