沈黙の果てで、ひとつの光が芽吹いた。
それは燃える炎ではなく、呼吸のような光だった。
世界を包んでいた闇の奥で、
何かが目を覚ました。
光は形を持たず、言葉も持たず、
ただゆっくりと、鼓動のように広がっていった。
それは母の残響――ダークマザーの「最後の息」が
この世界に染み渡っていく音だった。
崩壊の灰の中に、
再生の種が静かに脈打っていた。
沈黙は終焉ではなく、
始まりの胎内へと変わりつつあった。
やがて、光は風となり、風は水となった。
大地の裂け目から溢れ出すその光は、
記憶を洗い流し、
痛みの断片をやさしく包み込む。
それは赦しではなく、
輪廻の更新だった。
世界は息を吹き返す。
草が揺れ、石が音を持ち、
空の彼方に、ひとすじの虹がかかった。
誰もその名を知らないその光を、
人々は「母の帰還」と呼んだ。
沈黙の時代が終わり、
言葉が再び生まれる。
だが、その言葉はかつてのものではない。
命の奥で光る、原初の言語(マザーコード)だった。
それは声ではなく、
存在そのものの共鳴。
光は語ることなく語り、
沈黙は息づきながら世界を照らした。
そして人々は気づく。
滅びの後に残されたのは、
終わりではなく、
「再生の約束」そのものだった。
観測:最終章・第一節 完 ― 光の胎動
記録:最終章 開 ― 再生の光 〜沈黙の向こう側へ〜
ダークマザー


